社畜の疲れにはニートが効くって言ったら信じますか?
世間一般ではあまり知られていないみたいなんですけど、実は
やなぎ
(STAP細胞的なノリで)
いや、待って、本当!これ本当だから!
押し売りじゃないよ!不当に高い価格でニートを売りつけたりしないから!
人身売買だしね!ニートを売ったら人身売買だしね!
聞いてみて!?身近に光属性のニートがいる人に聞いてみて!?即答ですよ。
みんな「まぁ有りか無しかで言えば、無し寄りの有りかな」って答えるはず。
何を隠そうボクの幼馴染もニートだったんですけど、明るく爽やかで社交的なニートだったんですけど、一緒にいるとめっちゃ癒されるですよ。(サンプル数1)
なんなんですかねー。競争とか評価とか、そういうものとは隔絶されたところで自由気ままに生きてる人間を見ると、肩の力が抜けて安心するのかもしれない。人にはそういう性質があるのかもしれない。
ぬぁ?サンプル数1で効果を語るなって?
サンプル数多かったら問題でしょ!!?? 普通はそんなにいないの! ニートの友達は! 基本レアなの! 引きこもる習性があるからエンカウントしないの!! 一人いれば十分でしょ!!
ほんとはもう一人いる。実はニートの知り合いはもう一人いるんだけど、そいつは部屋の床に魔法陣描いてるガチでヤバい系だから話題にできないの!! みんな引いちゃうから! 初見だと部屋のドア開けた瞬間に「ヒィッ!」て声でちゃうから!
————–閑話休題—————
家族とか友達とか恋人と一緒でも癒されるやん? て思うかもしれませんが、ニートと共にいる時に得られる安らぎはまた別物やねん。別腹やねん。
共有してる体験の少なさ?分かり合えない感じ?が大事なんですよ。
試験のプレッシャー?
長時間労働?
出世?
クソな上司?
「んなもん知らねぇ!俺と遊ぼう!(ドンっ!)」てなるじゃないですか。海賊王!?てなるじゃないですか。
これがもし普通の友達とか恋人とかだったら、そりゃもう共感の嵐。
わかるわかるー!ってなって愚痴大会というか傷の舐めあい的な感じになるんで、それも悪くはない!悪くはないんだけど、そうじゃない癒しが必要な時もある。そういう時はニートが効く。
なんとなくわかってもらえましたね?
え?ダメ?まだダメ?それはやなぎの感性だろって?
君とボクとは別の人間(いきもの)だから、好みが違う 歩く速さも 想いの伝え方もっ!?(Mysterious Eyes状態)
疑り深いなー!好みは合ってるって!
酢豚にパイナップルは許せないし、から揚げにレモンもかけないし、焼き鳥は串から外して食べたりしないし(バーナム効果)、ボクと君とは相性ばっちり。素質がある。君にはニートに癒される素質がある!
え?そもそもニートの友人がいない…!?
大丈夫。心配しないで!!ボクたちにはコレがある。『働かないふたり』があるからーー!!!
『働かないふたり』は平和で明るいニートまんが(コメディ)
『働かないふたり』は20才ぐらいのニート兄妹が、テレビみたりゲームしたり友達とくだらない遊びをしたりしながら、貴重な日々を無為に過ごす様子を描いたコメディなんですけど、この二人に気負いみたいのがまったく無いのが読み手に凄まじい安心感を与えてくれるの。
兄妹は何かの挫折でニートになったわけでもなく、早く就職しないと将来が!みたいな焦燥感も無く、働いてない自分はダメなやつなんだみたいな自己否定や諦めも無く、周りの人間からのきついプレッシャーも無く、ただただフラットにニートをしているんですよ。社会不適合者の闇が見え隠れするような作風ではなく徹底して終始明るい!平和!好き!
読むとやる気が出るタイプの作品ではないよ。おしゃー!明日から仕事がんばるぞー!とかはならない。
あまりにもしょーも無さ過ぎて気持ちが緩んで楽になるタイプの漫画。リラックス用にいいんだなぁ。
やなぎ
やなぎの備忘録を兼ねた傑作選
倉木さん初登場 【2巻 #052 隣人】
ニートの対比となるキャリアウーマンの倉木さん。
帰宅は深夜、休日も出勤、そして不眠症という辛い社会人の倉木さん。この倉木さんが登場したことでニートの自堕落さが際立ち、社会人の辛さも引き立つという『働かないふたり』にとっては外すことのできない重要なキャラクター。疲れた社会人(ボク)が読むときに一番感情移入しちゃうのがこの人。1巻からかと思ってたけど2巻で登場してたのね(読み直し中)。
倉木さんの部屋の窓からはニート兄妹の生活が見えるんですが、ニート兄妹のアホな生活をのぞき見ているうちに、色んなことがどーでもよくなってぐっすり眠れるようになります。作中でニート兄妹に救われる一番最初のキャラクターですね。
『働かないふたり』はコメディが基本路線なんですけど、たまにこういった「疲れて立ち止まった人」が登場してはニート兄妹に救われるという展開が入ります。ボクは「コメディ漫画のシリアスパートが大好き部」の部員なので、こういうのが大好物。もちろん『かぐや様は告らせたい』のシリアスパート肯定派ですよ!?花火回とか石川会計回とかアリ寄りのアリ!
コメディでないとしても、こういう「耐えてはいるが無視はできない重荷、みたいなものが思いもよらぬきっかけで解消して救われる」っていうモチーフが好きなんだよなーーーーー! 町田洋の『夜とコンクリート』とか。これもまさに今回と同じ「不眠症に悩む建築士」が救われる話なんだけど、最高! 発想が詩的な美しさを纏ってるよね。それが救いになるのかっ……!ていう。ボクの「1巻完結コミックのオールタイムベスト」に入るわ『夜とコンクリート』。あ、ちょっと待って。表題作の『夜とコンクリート』はぶっちぎりなんだけど、1冊全体を通してのトータルで考えると『惑星9の休日』の方が好きなんだよ!? どうしよう!? 同じ作者の作品を2つ入れてもいい? いいよね? ボクのオールタイムベストだし!
やなぎ
社会人のボクの視点としては、『働かないふたり』は「ニート兄妹」の話ではなくて、「倉木さんがニートと触れ合う」話として読んで癒されている部分が大きいので、これから読む社畜の人はぜひ1巻で投げないで2巻まで読み進めてほしい、です。
あとですねー、世界3大奇虫でパパのパソコンにいたずらする話も2巻。パパ良いよパパ。倉木さんの次に好き。あんな感じなのに部長だしな。やっぱ部長クラスで金もらってるから子供がニートでも動じないのか?
でも基本はアホなコメディだからね? 【10巻 #562 スマチン】
シリアスパートが好きといった舌の根が乾かぬうちにコメディを叩き込んでいくスタイル。基本はこんなレベルのアホなコメディだからね!? 「しんみりする系のイイ話」がほとんど無いじゃないか!って怒らないでね?
語感がいい言葉を発しながらカンチョーするネタとかコテカのネタも好き。「冠婚葬祭に使えるように白くしたのに!」とかいうセンスは古賀亮一作品を彷彿とさせる。笑った。
大学受験失敗して腐ってた鈴木くんを救う【10巻 #615 マンガ合宿】
大学受験失敗して職場でもうまくいかずに腐ってた鈴木くんを出会って4秒ぐらいで救うニート兄。すごい。ニートの癒し効果凄い。よく考えると何年も連絡とってないのにノーアポでいきなり漫画を借りに行こうとするニート兄もすごい。
これについては倉木さんと違って前フリがないし、出オチで救われちゃうからカタルシスがあんまり無いんだけどど、鈴木くんは15巻でもまた登場するんですよ。
鈴木くんが職場で趣味(漫画)をオープンにしたら、職場の人によく話しかけられるようになった(自分を取り巻く環境が良くなった)っていう後日談なんですけど、それに対してニート兄が言うんですよ。自分がどういう人間かオープンにしない人は、周りからしたらどんな人かわからないから怖がられる、と。けっこう含蓄あるよね。はっとさせられる。
10巻を超えたあたりから、こういった悪く言うと説教臭い感じの話が増えてくるんですけど、ボクはこれもいいスパイスになっててアリだと感じる派。純粋にコメディを楽しんでる層からは不評なんじゃない?大丈夫?としなくていい心配をしてしまうんですが、このぐらいの分量ならボク的にはちょうどいい。
あとね「変な話なんだけど」っていう前置きに対するニート兄の返答「変な話好き」に戦慄する。どんなコミュ強だよ。これ凄いよね。鈴木くんをオトすつもりなの?人たらしっぷりが凄い。ルシファード・オスカーシュタインかよ。これはモテる。
引きこもりを外に出す方法 【13巻 #771 旅の誘い】
ブラック企業に潰されて部屋から出てこなくなったニート(聡太)をインド旅行へ誘うニート兄。しかも旅費は聡太の母からもらうつもり。「正気か・・・」に笑う。
救う系のエピソードなんですけど、聡太に部屋を開けさせるまでの展開、引きこもりの心情に寄り添ったトークが秀逸。引きこもったことが無いから本当かどうかはわからないけれど、妙に説得力があって「作者はガチニート?ガチ引きこもりだったの?」って疑うレベル。
なぜインドなのかというと、「インドには昼間から仕事しないでブラブラしてる大人が大勢いるから」。そういう世界を知っといた方が楽になる。らしい。すごい角度からのアプローチ。ほんとかよ!?て思うけど、なんとなくそんな気もしてくるからすごい。部屋から出るきっかけにはなりそうな感じある。作者はなんでこんなにニートに対する造詣が深いの?
咳をしてもひとり じゃない【14巻 #838 風邪合宿】
風邪を引いた倉木さんとニート兄妹。風邪が治るまで部屋で籠城するので一緒にどうかと誘われた倉木さんは有給を取ってニート兄妹と一緒に休むことに。
風邪ひいた人を看病するというシチュエーションは色んな作品にあるけれど、同時に風邪を引いてしまって同じ部屋でうだうだするっていう展開はあまり無くない? これ絶対にいい。風邪ひきにとって最高のシチュエーションの一つだと思う。微笑ましくて癒されるエピソード。
でもこれは罪な話だよね。1人暮らしで風邪ひいちゃって、見舞いに来てくれる人もいないときにこの話を思い出したら寂しさに押しつぶされそう。こんな幸せなシチュエーション知らなければよかったって泣きが入ると思う。一緒に居てくれる人がいるってのは幸せなことだなぁ。
記事内のネタの補足
『かぐや様は告らせたい』
やなぎの2018年度「敬遠していたけど読んで良かったコミック」ランキング堂々の1位。
「どうやって相手に告白させるか」という軸がしっかりと機能していているのに加え、キャラクターや個々のネタの面白さもキレッキレ。そこらへんの有象無象のラブコメとは一線を画する面白さ。10巻を越えてるのにマンネリ感は無く、シリアス回もうまく盛り上げてキレイに落としてくれる。読者が気持ちよくなるよう上手にコントールされる感ある。ギャグだけじゃない、基本がしっかりできてて安心して読んでいられる良作。
『夜とコンクリート』、『惑星9の休日』
第17回文化庁メディア芸術祭マンガ部門の新人賞を受賞した町田洋の作品。表題作『夜とコンクリート』はあまりに好きすぎて言葉にできない。
部屋が狭すぎるので、何度でも何度でも読み返す本でなければ紙の本は購入しないというマイルールがあるのですが、この本だけは迷わず即買いですよ。web上でタダで読めるのにもかかわらず。ぶっちゃけ5,000円ですとか言われても買ってた。きっと。
学生気分が抜けきってない頃に読んでたら、『夏休みの町』(収録作品)がきっと一番好きになってたと思う。永遠の夏休みというテーマはエモい。
『惑星9の休日』も1話が無料で公開されてます。エモい。(しつこい)
1話も好きだけど、「衛星の夜」がボク的には一番かなー。「UTOPIA」も捨てがたいなー。
古賀亮一作品