工藤勇一『学校の「当たり前」をやめた。』を読んで嫉妬の嵐が吹き荒れる。そしてボクは考えるのをやめた。

大金持ちの人はさ、そりゃもう教育費をジャブジャブつぎ込んでさ、先進的な教育システムがあって豪華な設備もある私立に子供を入れてさ、質の高い教育を受けさせればいいさ。全然いいよ。高い金払ってるんだからさ。

でも、これは無くない?公立でこの格差は酷くない?千代田区立麹町中学校ずるくない?ただでさえチート級の設備なのに校長もSSR。そこから始まる明治維新並みの改革ですよ?(OBも官僚とかのエリートでいっぱい支援してくれるよー)

教育格差だわー。教育格差を感じてしまうわー。

いや、頭では分かってる。これは喜ばしいことだ。公立でも改革が出来るということを明らかにしてくれたのだと。教師の行動によっては、公立でも素晴らしいシステムの学校が作れるということを示してくれたのだと。

でもこのムーブメントは広がらない。広がるとしても途方もない時間がかかるだろう。

なぜならこの改革は一教師がどうにかできるレベルの話ではないし(校長が判断して決定しなくてはならないし)、既存のシステムを変えていくのは重労働だし、学校側が積極的にこのシステムを取り入れるインセンティブが無いから。

この本は主に教育者に向けて書かれているので、「保護者としてどう働きかけるか」という視点の話はあまり無い。というか保護者が働きかけたところでどうにかなるようなレベルの話ではないので、無力感がすごい。指を咥えて羨むだけ。

ちなみに本の内容はインタビュー記事とかで書かれている内容が大部分なので、色んな記事を読み漁ってるっていう人は買う必要ないと思う。目新しい情報とかはそんなにないよ。

学校とは何をする所なのか?

工藤勇一校長の素晴らしいところは、学校を「社会の中でよりよく生きていけるようにする」場所だと定義したことと、その目的を果たすために最適な手段は何かを考え抜いたという2点。

「勉強をする」というレベルに留まらなかった。「なんのために」勉強するのかという所に焦点が置かれたことで今の学校教育における無駄で非効率な部分が炙り出されていく。

言ってること、やってることは凄くシンプルで、目的と手段が適切かっていうだけ。ほんとこればっかり。いま学校でやってることの意味はなんですか?本当に効果があるんですか?

宿題を出す意味は?定期考査をする意味は?作文を書く意味は?運動会をする意味は?

それ、ちゃんと成果が出てますか?子供のためになってるんですか?子供のためではなく教師の都合でやってるんじゃないですか?

工藤勇一校長の改革例と意図

宿題の廃止

宿題の目的は「学力の向上」

勉強ができる子は解ける問題を解いてるだけなので意味が無い(学力向上していない)。

勉強できない子は解けない問題は解いてこないので意味がない(学力向上していない)。

「できない」問題を「できる」ようにしなくてはならないが、そのポイントは人によって違うのだから、一律で同じ宿題を出すことには意味がない。

自分で足りないと思う所を自分で考えて勉強しなさい。というのが改革の意図。

中間・期末テストの定期考査を全廃

テストの目的は「学力の定着を図る」こと。

一発の試験を一夜漬けで高得点をとっても学力は定着したとはいえない。

5月の中間で解けなかったとしても、7月の期末の時点で解けるようになっていれば何の問題もない。

よって、再挑戦が可能な単元毎の小テストと、年に5回の実力テスト(出題範囲は示されない)によって学力を測るほうが適切。

固定担任制の廃止

固定担任制では良くも悪くも責任を持ちすぎる。クラスの子供に好かれたいので過保護になる。担任の当たり、外れ等の考えが出てくる。

よって「チーム医療」のように、教師の個性を活かしあって学年を担当することで上記の問題を解決した方がメリットが多いと判断。

生徒会主催の運動会

運動会の目的を「競争心を養う」、「運動能力の優劣をつける」ではなく、「生徒全員を楽しませること」と設定。

どうすれば生徒全員が楽しめるかを生徒みんなで考えて実行することが教育になる。

服装、頭髪のルールは権限をPTAに移譲

靴下の色、金髪、ピアス等は主観の問題であり、国が違えば何の問題もなかったりする。こんなのはさほど重要なことではない。

学生やPTAが話し合って最適なものを決めればよいというスタンス。

麹町中学校の先進的な取り組み

本の前半部で「慣例に囚われて思考停止してんじゃねーぞ」、「目的と手段を履き違えるなよ」と現代の学校教育を批判した後、後半部で校長と麹町中学校のパワーを存分に活かした豪華な教育で止めを刺しにきます。オーバーキルもいいとこ。

ここからは本当に指を咥えて見てるだけになるからな!麹町中学校の学区内にいなかったことに絶望しながら読み進めるんだぞ!

・『頭がいい人はなぜ、方眼ノートを使うのか?』の著者を呼んでノートの取り方を教育

・ 一流大学の学生を呼んで討論手法や思考ツールの活用法を教育

・旅行会社とタイアップして「ツアー企画」。修学旅行はこの企画ための取材。

・プロカメラマンを呼んで校外学習(写真のコンテスト)

・一流企業への模擬インターンシップ(クエストエデュケーション)

・日本大学法学部と日本法育学会の指導で模擬裁判の実施

・アメリカの非営利団体の指導でミュージカルのワークショップ(ヤングアメリカンズ)

等々。

書くのも嫌になってきたわ。

キッザニアに何度も何度も子供を連れてく労力があったら、麹町中学校に子供をねじ込む方に労力を使ったほうがいいわ(絶望)

で、親はどうすればええねん

どうにもならーーーん!財力があれば麹町に引っ越せ!以上。世帯年収が凄まじいらしいけどな!

それ以外は校長ガチャでSR「改革の波動に目覚めた校長」が来るのを待つか、学校教育なんてさっさと見限って、親が死力を尽くして環境を用意するしかない。

実際に現場で働いてる教師にこの本の感想が聞きたい。

いま話題の「公立中学で教育改革を進める工藤勇一校長と麹町中学校」についてまとめ

 

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